やりたいことは直感に任せるのではなく、論理立てて探したほうが見つかります。
まずは自己理解メソッドの3本柱を説明します。3本柱とは、
1 好きなこと
2 得意なこと
3 大事なこと
の3つです。この3つの要素を組み合わせて2つの公式が生まれます。
公式① 好きなこと × 得意なこと = やりたいこと
公式② 好きなこと × 得意なこと × 大事なこと = 本当にやりたいこと
公式①で「やりたいこと」自体は見つけられますが、実はそこに「大事なこと」がかけていては不完全な「やりたいこと」になってしまうのです。「好き × 得意 × 大事 = 本当にやりたいこと」になります。
まず最初は「やりたいこと」からです。多くの人は、「好きなこと = やりたいこと」と考えていますが、それではまだ分解が足りません。「やりたいこと」とは「好きなことを得意なやり方でやること」です。では、「やりたいこと」の定義を理解してもらうために「好きなこと」と「得意なこと」も定義しておきます。
「好きなこと」とは「自分の情熱がある分野」のことです。情熱があるのでずっと成長し続けていくことができます。「好きなこと(=情熱)」の特徴をまとめておくと、
・興味があってもっと知りたいと感じる
・関わるだけで面白いので「これが本当に仕事でいいの?」と感じる
・「なんで?」「どうすれば?」のような問いが湧いてくる(例:なんでロボットは動くの?)
などがあります。自分が興味を感じてこれに関わっていたい情熱をそそられる「分野」のことを好きなことと呼びます。
続いて、「得意なこと」とは「自然と人よりも上手くできて、やっていて苦なく心地よいこと」のことです。実は100%全員が持っているのに気づいていません。自然とできてしまうことなので「才能」とも言います(素質や特性や性格と呼ばれることもあります。)
例えば、相手の立場に立って考えること、人と競うこと、勉強すること、情報を集めること、深く考えること、分析することなどになります。得意なことの特徴をまとめておくと
・やっていて心地いい
・頑張らなくても無意識にやっている
・ストレスがないので夢中になりやすい
・やっていると自分でいられる感覚がある
・仕事でなくても普段から自然とやっている
・他の人に対して「なんでこんなことができないの?」と思う
などがあります。もちろん、「好きなこと」と同じく「得意なこと」もやっていて楽しいものです。
「得意なこと」とよく混同されるのが「スキル・知識」です。この2つは似ているようで全く違います。「得意なこと」は「リスクを考えられる」「人の気持ちを大事にできる」「1つのことを突き詰められる」などです。一方で「スキル・知識」とは、「英語が話せる」「プログラミングができる」「ウェブマーケティングの知識がある」などになります。この2つは一般的には同じように「得意なこと」と呼ばれていますが、2つの点で全くの別物です。まず「得意なこと」は生まれつき持っているもので、「スキル・知識」は後で身につけられるものという違いがあります。
また、「得意なこと」は一度学んで使えるようになれば、どんな仕事にも使えるもので、「スキル・知識」は特定の仕事でのみ活用可能なものです。より重要なのは、「得意なこと」の方です。なぜなら、どんな仕事でも使うことができるし、一度使い方をマスターしてしまえば、時代がどう変化しようと武器として活用することができるからです。「スキル・知識」ももちろん必要ですが、これに依存してしまうと人生の自由度を下げてしまうことがあります。例えば転職をしようとするときに「今持っている保育士の資格を活かせる職場はどこだろう?」と考えてしまうと、選択肢は保育園一択になってしまいます。選択肢が狭まってしまうといつまでたってもやりたいことには辿り着けません。スキルや知識は、自分のやりたいことを実現するために活用する手段です。スキルを活用することが目的になってしまうと、人生はつまらなくなってしまうのは当然です。だからこそ、いつの時代でもどんな場所でも使える「得意なこと」を理解しておく必要があります。「スキル・知識」は、「本当にやりたいこと」が見つかってから必要であれば身につければ大丈夫です。
さて、「やりたいこと」とは結局なんなのでしょうか?
やりたいことを言い換えると「What(何を) × How(どうする)」の組み合わせです。「What = 好きなこと」で「How = 得意なこと」です。
(例)
・What = ファッション
・How = 物作りをする
・What × How = ファッション関連の物作りをする
多くの人は「What」だけを考えた結果、仕事選びを失敗します。食べ物が好きだから食品業界の入ろうだけではだめなのです。その会社での自分の役割が「得意なこと」でないと仕事は苦痛でしかありません。ですので、「本が好き!だから書店で働こう!」という考え方には「ちょっと待った!」をかけます。本(What)が好きだからといって書店での仕事内容(How)が好きとは限りません。「やりたいこと」を考えるときは、具体的な仕事内容(How)も自分に合っているかを考えるのが大切なのです。僕の場合は好きなことは「人の成長に関わる」、得意なことは「学んだことを分かりやすく教える」そしてやりたいことが、「人の成長に関わり、教え導く」です。日々学んだことを整理して人に話すのは、仕事じゃなくても自然とやってしまうので無意識にできる「得意なこと」です。
同じ「好きなこと」を持っていても、「得意なこと」が違えば「やりたいこと」も変わります。例えば同じ「人の成長に関わる」が「好きなこと」でも「人の話を聞いて引き出す」のが得意な人は、「相手の話を聞いて引き出して、気づきを得てもらう」が「やりたいこと」になるでしょう。
また、同じ「得意なこと」を持っていても、「好きなこと」が違えば「やりたいこと」も変わってきます。同じ「学んだことをわかりやすく教える」という「得意なこと」を持っていても好きなのが「スポーツ」の場合は、「スポーツについて分かりやすく教える」が「やりたいこと」になります。これが「やりたいこと」の定義です。
さて、「公式①好きなこと × 得意なこと = やりたいこと」を正しく理解していただけたでしょうか?
では、1段上の「本当にやりたいこと」に入っていきましょう。
公式② 好きなこと × 得意なこと × 大事なこと = 本当にやりたいこと
「やりたいこと」を仕事にするだけでも、ある程度は夢中になれるでしょう。けれど、まだ不完全です。椅子は2本の足では立ちません。3本の足があって、初めてしっかりと立ちます。同じように、働き方も3本の柱が揃って初めて「本当にやりたいこと」と言えるのです。
「大事なこと」は、状態を表しています。例えば「自由に生きたい」「人に優しく生きたい」「安心して生きたい」「穏やかに生きたい」「熱中して生きたい」などが「大事なこと」の一例です。価値観といってもいいです。どれも行動ではなく状態だと言うことが分かってもらえるでしょう。英語で言うとDoingと、Beingになります。行動だけでなく、状態も合わさって初めて「本当にやりたいこと」になるのです。
どれだけ「やりたいこと」をやっていても、残業だらけで自分の時間が取れていなくて、しんどさを感じているのなら、その働き方は自分には合っていないことになります。それは、「大事なこと」が満たされていないからです。本当は時間の自由を得て家族との関係を大事にしながら働きたいと感じているのに、その働き方をしているとしたら、その人は不幸でしょう。けれど「仕事こそが一番自分の人生で大事!」と思っている人にとっては、今の状態こそが理想の状態かもしれません。このように、「やりたいこと」をしているときにさらに「大事なこと」も満たしている状態こそが、「これが本当にやりたいことだ!」となります。
「なんのために働くのか?」という質問に対しての答えが「大事なこと」です。「自由にいきたいから働く」「安心していきたいから働く」「穏やかに生きたいから働く」「熱中していきたいから働く」など、答えにもちろん正解はありません。自分がその目的に対して心の底から「このために働いている!」と言えれば、働く目的もなんでもOKです。
「大事なこと」は自分の内側に向く場合と「他人や社会」などの外側に向く場合があります。「大事なこと」が自分の内側に向くと、人生の目的が決まります。「大事なこと」が他人や社会など外側に向くと、仕事の目的が決まります。
ちなみに僕の場合はこんな感じです。内側の大事なこと→人生を謳歌する。(人生の目的)外側の大事なこと→世界中の子供達が夢を語り合える社会を創りたい(仕事の目的)
この「仕事の目的」はとても重要です。他人へ貢献している実感が得られることは、仕事でのとても大きなモチベーションになるからです。僕も仕事で一番嬉しい瞬間は生徒が「できた!」という瞬間に関われている時です。その先にある合格の報告を受けたときもこの仕事をやっていて良かったなと思えます。大事なことを明確にすることが仕事の目的を決めるためには重要です。
大事なことは言い換えると「Why(なぜ)」になります。
よって、本当にやりたいこと = What × How × Why(何をどうする。それはなぜ)とも言えます。
例えば、僕の場合は
・What = 人の成長に関わる
・How = 分かりやすく教える
・Why = 人生を謳歌してほしい
となり、
・What × How × Why = 人生を謳歌できるように成長に関わり、教え導く
と繋がります。
「本当にやりたいこと」を探すというと、何から始めればいいかもわからず迷子になってしまう人が多いと思います。けれど、どうでしょうか?
ここまで説明してきた3つの要素をそれぞれ見つけて組み合わせるだけなら、なんとなくできそうな気がしてきませんか?それでは、これから1ステップずつ実践していきましょう!